ツンデレ眼科

2017.06.17 18:25|思い出
昨日は自分の不安神経症と、更に医師の思い出についてちょっと書いた。
今日はそのつづきというか、それで思い出したことを書く。

子どもというものは、そもそも医者が嫌いである。注射はもちろん怖いし、歯の治療なんて拷問に等しい。わたしもそのタイプの子どもだった。なのに予防接種は必要だし、きちんと歯磨きをしている筈なのに、やたらと虫歯になる。虫歯が見つかると、親に引きずられるようにして歯医者に連れてゆかれることになる。

わたしが小学校の間通っていたのはI歯科医院というところだった。いつも母の車に乗って行っていたので、場所はよく覚えていない。薄暗い、古いビルの二階で、待合室が廊下になっていたような気がする。 でもこれは後で自分で勝手に作り出した記憶かもしれない。わたしはそういうことがけっこうある。
ある程度大きくなってからの検診や治療では、先生がなにをするか説明してくれることもあって、あまり恐怖感はない。だけど子どもの頃は、なんだかよく分からないままに椅子に座らされて、口の中に色々つっこまれる。そう、歯の治療は、なんだかよく分からない、痛いものでしかないのだ。でも、女の先生だとあまり痛くないので(多分歯石か汚れ落としだったのだ)、いつもこうならいいのになあ、と思っていた。
ある日、まだ小学校低学年だったわたしは、椅子に座って、男の先生の顔を見るなり泣きだした。だけど先生は子どもの泣き顔には慣れている。わたしの抵抗なんてものともせずに治療は強行された。
あれ、と削られながら思った。痛くない。嫌な高い音がするから痛いつもりになっていたけど、実は時々しか痛くないのだ。
治療が終わったとき、乾いた涙でぱりぱりになった顔を擦りながらわたしは言った。
「思ったより痛くなかった」
先生は笑った。
「泣いて損したろう」

それから何年か経って、中学のとき、学校帰りに眼科に行ったことがあった。よりによってこのあたりで一番怖いと有名な先生のやっている病院だ。年寄りで偏屈で、わたしの祖母に、「もうすぐ死ぬくせに眼なんか治してなんになる」と言った人である。祖母は怒って二度とそこには行かなかった。他の病院にいけば良かったのだけど、学校帰りにはそこがいちばん寄りやすかったのだ。
眼科はやけに古い、なんだか威圧的なビルの一階にあった。患者さんは誰もいなくて、すぐに自分の名前が呼ばれた。どんな暴言を吐かれるのか、緊張で体中がっちがちである。わたしは診察室に入るなり一礼し、軍隊かなにかかという勢いで自分の症状を説明し、診察を受けた。先生はむすっとしていたけど、特に酷いことは言われなかった。それで気が緩んだ。診察が終わるとわたしはうっかり言った。
「思ったより怖くなかった」
言ってからしまった、と思ったけど、先生は横を向いたまま
「ちゃんとしてりゃあ、怖かないんだよ」
と言っただけだった。

わたしがその眼科にかかったのはそれ一度きりだ。先にも後にも、その先生については、腕はいいけど乱暴で意地悪だ、という話しか聞いていない。
あの先生は今で言うところのツンデレだったのだと思う。

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